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SBテクノロジーがRAGで実証実験

SBテクノロジーがRAGで実証実験

SBテクノロジーが、JR西日本の建設部門が持っている約6万件の鉄道建設工事関連のドキュメントを使って、RAG技術を活用した生成AIの実証実験を行いました。 この実験では、過去の知見や技術ノウハウを活用して、若手技術者の技術判断の精度を上げることを目指しています。 結果として、情報の分類やそれに応じた回答生成に関して、一定の有用性が確認されました。

RAGというAI技術を活用できる実証実験で一定の有効性が出たとのことですが、まず、RAGとは何でしょうか?

RAGとは

RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、検索技術とAIによる文章生成を組み合わせた仕組みのことです。日本語では「検索拡張型生成」とも訳されます。

RAGの仕組み

RAGは大きく2つのステップで成り立っています。

1. 情報検索(Retrieval)

最初に、質問や要求に基づいて、関連する情報を既存のデータベースやドキュメントから検索します。この段階では、膨大なデータから必要な情報だけを抽出します。

2. 情報生成(Generation)

次に、検索で見つかった情報をもとに、生成型AIが回答を作ります。この生成段階では、AIが見つけた情報を使って、具体的で正確な文章を生成します。

RAGの特徴

  • 正確な回答
    単なる生成型AIモデルでは難しい、データに基づいた具体的な回答が得られます。

  • 最新情報の活用
    AIモデル単体では対応しづらい最新情報をデータベースから取り込むことで、より現実に即した回答が可能です。

  • 幅広い応用
    企業の内部データや技術文書を活用する業務支援や、顧客対応システムなど、さまざまな分野で利用されています。

具体例

例えば、企業内の膨大なマニュアルや過去のプロジェクト記録を活用する場合、RAGを使うと必要な情報を検索して、わかりやすい形で提示することができます。このように、RAGは効率的に情報を活用できる技術として注目されています。

今回のような例がまさにそれですね。ChatGPTのようにいくつかの文書を読むというのもRAGの一種ですが、SBSBテクノロジーは6万件という膨大な資料でも実行できたということが大きな成果です。

他にもRAGによって得られるものがないか見てみましょう。

RAGの活用メリット

RAGを導入することで、以下のような具体的なメリットが得られます。

1. 正確で信頼性の高い回答の提供

RAGでは、生成型AIが直接回答を作るのではなく、事前に検索した信頼性の高い情報を基に回答を生成します。そのため、AI単体では起こりがちな誤情報や不正確な回答のリスクが低減されます。

2. 最新情報の利用が可能

通常の生成型AIは、学習時点までの情報しか持っていません。しかし、RAGではリアルタイムで更新されるデータベースや文書を検索対象にできるため、最新の情報を活用した回答が可能になります。

3. 業務効率の向上

膨大な情報を持つ企業や組織では、必要な情報を人が探すのに時間がかかります。RAGを活用すれば、必要な情報を迅速に検索し、わかりやすく整理した形で提供できるため、業務効率が大幅に向上します。

4. ドメイン特化型AIの構築

RAGでは、特定の分野に特化したデータを検索対象にできるため、一般的なAIよりも特定業務や専門分野に適した回答が得られます。たとえば、医療、法律、建設といった専門性の高い分野での活用が可能です。

5. 知識伝承や教育の効率化

過去の膨大な文書やノウハウを活用して、新人や若手社員が効率よく知識を習得できる仕組みを構築できます。特に専門的な知識が必要な現場では、RAGを通じて経験豊富な人材の知識を活用しやすくなります。

6. 柔軟なカスタマイズ

RAGでは、検索対象のデータベースを自由に設定できるため、特定の目的やニーズに応じて柔軟にシステムをカスタマイズできます。

活用例

  • 業務支援:社内の膨大なマニュアルやドキュメントを活用し、効率的に回答を生成。
  • 顧客対応:FAQデータベースと連携して、カスタマーサポートを強化。
  • 研究開発:過去の研究成果や論文を検索して、プロジェクトに適用。

RAGは、AIがただ答えるだけでなく、「適切な情報を探して、それを基に考える」という機能を持つため、あらゆる場面での生産性向上や意思決定の支援に大きく役立ちます。

RAGを使う上で気を付けるべきポイント

RAGは非常に有用な技術ですが、その効果を最大限に発揮し、リスクを最小限に抑えるためには、いくつか注意すべきポイントがあります。

1. データの質と信頼性

RAGは、検索されたデータを基に回答を生成するため、使用するデータの質や信頼性が結果に大きく影響します。誤った情報や古いデータが含まれていると、生成される回答も正確性を欠く可能性があります。そのため、以下を心がける必要があります。

  • データソースの選定を慎重に行う
  • データを定期的に更新し、最新情報を維持する

2. 個人情報や機密情報の扱い

RAGでは膨大なデータを扱うことが多く、個人情報や機密情報が含まれる場合があります。情報漏えいを防ぐため、以下を徹底する必要があります。

  • データのアクセス制限を設定する
  • プライバシー保護や情報セキュリティのガイドラインに準拠する

3. 生成結果の検証

RAGは、検索と生成を組み合わせることで高精度な回答が期待できますが、生成結果が必ずしも正確であるとは限りません。特に専門的な分野では、以下のような対策が重要です。

  • 生成された回答を人間が確認するプロセスを組み込む
  • 結果の正確性を継続的にモニタリングする仕組みを導入する

4. 検索結果のカバレッジ

RAGの検索ステップでは、関連性の高い情報が見つからない場合や、データが不完全な場合には、適切な回答が生成できません。そのため、次のような点に注意が必要です。

  • データベースのカバレッジを広げる
  • 検索アルゴリズムの精度を向上させる

5. 利用目的の明確化

RAGは応用範囲が広い一方で、利用目的に応じたカスタマイズが必要です。具体的には、以下を考慮します。

  • 必要なデータを適切に絞り込み、過剰なデータを避ける
  • ドメインに特化したRAGシステムを設計する

6. 計算資源とコストの管理

RAGは検索と生成を組み合わせるため、計算リソースを多く消費します。大規模なデータベースを扱う場合は、運用コストが増加する可能性があるため、以下を意識すると良いです。

  • 効率的なインフラ設計を行う
  • 使用頻度や規模に応じたリソース管理を徹底する

7. ユーザー教育

RAGを業務で活用する場合、ユーザーがその仕組みや使い方を正しく理解していないと、効果が十分に発揮されません。そのため、次のような取り組みが必要です。

  • RAGの特性や限界をユーザーに周知する
  • 使用方法に関するトレーニングを実施する

まとめ

RAGを導入することで効率的な情報活用が可能になりますが、データ管理や生成結果の検証、利用目的の明確化といった基本的な注意事項を守ることが、成功の鍵となります。適切な運用体制を整え、リスクを最小限に抑えることが重要です。


参考

記事参考

https://www.softbanktech.co.jp/news/release/press/2024/018/

調査記事

https://ai-market.jp/technology/rag-applications/

RAGを活用して成果を上げている企業

RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を導入し、業務効率化や生産性向上に成功している企業の事例をいくつかご紹介します。

1. コネヒト株式会社

コネヒトは、社内文書の参照機能をRAG技術で実現しました。これにより、社内制度やナレッジに関する文書を効率的に検索し、関連情報を基にした回答生成が可能となり、業務効率が向上しています。

2. ソフトバンク株式会社

ソフトバンクは、AIの教師データ作成サービス「TASUKI Annotation」において、RAGデータ作成ツールを提供しています。これにより、生成AIの回答精度向上を支援し、社内外のサポートサービスの質を高めています。

3. LINEヤフー株式会社

LINEヤフーは、独自の業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員向けに導入しました。このツールはRAGシステムを活用しており、社内データやワークスペースツールの情報を参照し、従業員の質問に最適な回答を提供しています。

4. ライオン株式会社

ライオンは、生成AIと検索システムを組み合わせた「知識伝承のAI化」ツールを自社開発しました。これにより、研究員が蓄積された技術知識や実験データから必要な情報を迅速に取得できる環境を整備し、新しい価値創造を支援しています。

5. AGC株式会社

AGCは、社内生成AI活用環境「ChatAGC」に社内データとの連携機能を搭載し、RAG技術を活用しています。これにより、従業員が社内データを基にした回答を得られるようになり、情報活用の効率化と生産性向上を実現しています。

これらの企業は、RAG技術を活用することで、社内データの有効活用や業務効率化、知識伝承の促進など、さまざまな分野で成果を上げています。

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